Listeriamonocytogenesの主要な病原因子であるリステリオリシンO(LLO)はコレステロール結合型膜傷害毒素であるが、我々はこのLLOが宿主Th1型サイトカイン産生を誘導することを明らかにした。また、このLLOの活性から、LLOをアジュバントとしてワクチンに応用できる可能性が考えられた。一方、細胞に対して傷害性を有するLLOはそのままin vivoに用いることはできないため、本研究では膜傷害性のないLLOのサイトカイン誘導活性の最小単位を決めると共に、抗結核ワクチンへの応用の可能性を検討した。 その結果、LLOは第4ドメインを欠失させてもIFN-γ産生誘導能示したが、この第4ドメインを持たないLLOのN末端部分をさらに欠失させると、そのIFN-γ誘導能が低下することがわかった。しかし、このtruncated LLOのIFN-γ誘導活性が消失するわけではないことから、このN末端部分がサイトカイン誘導活性に必要なLLOの立体構造の維持に必要であると考えられた。また、LLOによるサイトカイン誘導活性は、LPSに低応答性のC3H/HeJでは認められなかった。さらに、CD14に対する抗体でLLOのサイトカイン誘導が阻害されたことから、LLOの刺激がLPSのシグナル伝達系を介して細胞内に伝わる可能性が考えられた。また、LLOはJ774.1細胞表面の分子量50-60kDaの分子と結合することが示され、この分子がLLOの受容体として、あるいはアクセプター分子としてLLOサイトカイン誘導に関与すると考えられた。 LLOのアジュバント活性を調べるため、単独では防御免疫を誘導できないBCG死菌と共にLLOでマウスを免疫し、防御免疫が誘導できるか否かを調べた。その結果、リポソームに封入したLLOがアジュバント活性を発揮したことから、結核に対するワクチンにLLOを応用できることが示された。一方、LLOより細胞毒性の低いtruncated LLOは、リポソームへの封入効率が悪く、その投与方法を検討する必要があった。
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