前年度の研究において壊死毒(DNT)のN末端側から54位Gluまでのペプチド断片(B断片)にDNTの結合ドメインが存在することがわかった。B断片のアミノ酸配列を詳細に調べたところ、B断片のC末端側に動物細胞由来プロテアーゼのfurinの認識モチーフが存在することがわかった。そこでDNTをfurinで処理したところDNTはこのモチーフの位置で切断された。DNTの細胞に対する作用はfurin処理により100倍程度強くなり、逆にfurin認識部位に点変異を導入したDNTは細胞に対する作用が完全に消失した。DNTはfurin処理後もDNTのN末端領域とC末端領域は非共有的に結合していた。Furin処理DNTは人工脂質膜であるlipsomeと結合しなかったが、DNTの細胞への結合ドメインを除いたDNTdeltaBはliposomeと結合した。さらに、DNTdeltaBは本来DNTに感受性のないBalb/3T3細胞にも作用した。以上の結果から、DNTはN末端側のB断片が細胞膜上のfurinもしくはfurin様プロテアーゼと相互作用した後、酵素活性ドメインを含むC末端領域が解離して直接に細胞膜と相互作用する。その結果、最終的に酵素活性領域が細胞膜を通じて細胞内に直接移行すると考えられた。現在はこのfurinもしくはfurin様プロテアーゼがDNTの細胞膜上の受容体として機能しているのかどうか検討している。
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