研究概要 |
食餌性B型ボツリヌス中毒起因菌(Okra株)と乳児ボツリヌス症起因菌(111株)の神経毒素遺伝子(3,873bp)を鋳型として、受容体認識に関与する重鎮C末端領域(1,311bp)を増幅し、pQEベクターに挿入し、分子量約46kDa(437アミノ酸残基)からなるリコンビナントを精製し、受容体に対する結合活性を検討している。 毒素受容体蛋白として同定されているシナプトタグミンIIは、N末端領域60残基内に毒素認識部位が存在することが、これまでの研究成果から明らかになっている。他のシナプトタグミンアイソフォームとの構造を比較しながら、毒素認識に必須なアミノ酸残基を同定するために40種類の点変異体および欠失変異体を作成し、それらの毒素結合活性を調べた。作成した変異蛋白のうち、Phe54、Glu57の変異体は毒素との結合を完全に消失した。また、Ser42、Phe47、Phe55、Asn59の変異体の毒素結合活性は低下した。N末端から40残基までを欠失させた変異体は毒素結合活性を保持していた。これらの結果は、シナプトタグミンII分子N末端領域の40から60残基内に毒素受容体としての機能が集約されていることを示している。さらに、Phe54、Glu57は低親和性結合部位を担うシナプトタグミンI以外の他のアイソフォームには存在しないアミノ酸残基であり、シナプトタグミンIとIIが毒素受容体蛋白として機能するための必須の部位と考えられた。Ser42、Phe55、Asn59はシナプトタグミンII分子に特異的に存在するアミノ酸残基であり、これらがシナプトタグミンIIが高親和性部位として機能するために重要な働きをしていると考えられた。
|