研究概要 |
1.hlyAの正の制御遺伝子として報告されているhlyUの遺伝子内部をPCR法により遺伝子増幅し、これをスーサイドベクターにクローン化した.これを用いコレラ菌N86株に導入し、single crossoverによりhlyUを破壊した変異株を分離したが、N86株においては溶血性の低下は著明に見られなかった.そこで、コレラ菌およびコレラ類似菌であるV.cholerae non-O1株の中で溶血性が著明に見られる株へも導入した.これらの株でhlyU破壊株を分離して、その溶血性を調べたところ、ごく一部の株では溶血性が若干低下がみられたが、大多数の株では溶血性の低下は見られなかった.このことから、hlyUが正の制御遺伝子であるということはすべての溶血株で見られる現象ではなく、hlyU以外にも別の制御遺伝子ある可能性が示唆された。 2.新たに制御遺伝子を検索すべく全DNAの約600bp断片をスーサイドベクターにクローン化し,コレラ菌N86株に導入し,挿入変異株約3000コロニーについて溶血性の低下したIM1,IM2の2株を得た.IM1は完全に溶血性が失われていたがIM2は溶血性の低下は見られたが,完全には失われていなかった.挿入部位の塩基配列をTIGRのコレラ菌ゲノムデータベース検索したところ,プラスミドはヘモリジン構造遺伝子の上流約2kbに存在する大腸菌の多剤耐性遺伝子と相同性を有するemrDの遺伝子内部(IM2)およびその上流に存在するORF(IM1)に挿入されていた.また,IM1,IM2のmRNAレベルでの発現を調べたところ,IM1では発現が見られたもののIM2では発現は全く見られなかった.これらことはemrDもしくはその近傍領域がヘモリジン産生に関与していることを強く示唆している.
|