本年度は、ポリクロナール抗体の作製とLPSによる細胞活性化に関与する新たな分子を検索し、生物学的特性の解析を行った。 (1)CD14陰性骨髄ストローマ細胞株(ST2)細胞膜に対するポリクローナル抗体の作製。 申請者はこれまで、マウス骨髄ストローマ細胞株ST2がOD14の発現はなく、マクロファージとほぼ同程度のLPS反応性を有することを明らかにしている。そこで、ST2細胞から精製した細胞膜およびこの細胞膜よりHPLCで部分精製したLPS結合タンパク質を抗原としてポリクロナール抗体を作製した。 (2)マクロファージ膜タンパク質中のリピドA結合タンパク質の同定 (1)で作製した抗体による免疫沈降で膜タンパク質を濃縮し、これを電気泳動で分離後、楠本正一教授(阪大)らにより合成された高い放射活性をもつ[^3H]標識リピドA前駆体(PE-406)および[^3H]標識リピドA(PE-506)を用いたリガンドブロット法でリピドA結合タンパク質を検出した。その結果、57kDaと53kDaの膜タンパク質(p57とp53)が無刺激のマクロファージでは発現しているが、LPSで活性化するとその発現が完全に消失すること、LPS低感受性C3H/HeJマクロファージではこのp57とp53はLPS刺激の有無に関わらず発現していること、またp53への[^3H]標識リピドA前駆体PE-406および[^3H]標識リピドA(PE-506)の結合は合成リピドA前駆体(406)、合成リピドA(506)、PE-406やPE-506では抑制されなかったが、S.minnesotaSLPSやReLPSにより抑制されることが明らかとなった。
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