研究概要 |
1.3つのタイプのSCCmecの全塩基配列の決定:メチシリン耐性を規定するmobile genetic elementであるSCCmecには、少なくとも3つのタイプ(Type-I,Type-II,TypeIII)が存在する。さきに全塩基配列を決定していたType-II N315のSCCmecに加えて、Type-ISCCmecの代表株NCTC10442及びType-IIISCCmecの代表株85/2082のSCCmecの全塩基配列を決定した。これらSCCmecの中央にはmec-I-mecR1-mecA遺伝子複合体(あるいはΔmecR1-mecA複合体)が存在している。この複合体及び近辺の領域は塩基配列の上でも、非常によく一致している。これに対してその他のSCCmec上の領域はそれぞれのタイプに特徴的な構造をしている。しかし、それぞれのタイプに特有な両末端の逆向き塩基配列、ccrA,ccrB遺伝子の存在、これらが染色体上の同じORF(orfX)に挿入されている点では共通性をもっている。Type-I SCCmec上にはセリンとアスパラギンの二つのアミノ酸の繰り返し配列を持つ1698アミノ酸から構成されるORFが存在することが見いだされた。このORFはS.aureusの細胞壁に結合している表層蛋白と非常に良く似た構造をもっている。またType-III SCCmec上にはccr遺伝子と高いホモロジーを示すORFがccrA,ccrB遺伝子とは別に存在していることが明らかとなった。 2。CcrA,CcrBの機能:これまでに作製したN315由来のCcrA2,CcrB2をクローニングしたプラスミドpSRに加えてCcrA3,CcrB3をシャトルベクターpYT3にクローニングしたプラスミドpSR3を作製し,N315にエレクトロポレーションで挿入し、mecの脱落を検討した。しかし、pSRの場合とは異なり、mecの脱落は殆ど見られなかった。この点は今後さらに、検討する予定である。
|