細胞侵入性細菌S.Enteritidisに対するカテキンの抗菌作用 細菌性食中毒の主要原因菌の一つであるS.Enteritidis(SE)に対して、緑茶抽出エキスおよびカテキンが抗菌殺菌作用を示すこと、またサルモネラの主たる病原性は、腸管内における細胞侵入性にあることから各種細胞培養株およびBALB/Cマウス腹腔マクロファージを用いて、菌と宿主細胞相互におよぼすカテキンの作用を検討した。 1.MIC未満(12.5〜100μg/ml)のカテキン(EGCg)で1〜2時間処理した菌を細胞に感染させた場合、THP-1(ヒト単球細胞株)では無処置対照群と比較して細胞内への菌の侵入および増殖に差が見られなかった。しかしマウス腹腔マクロファージ(Resident Mφ)では細胞内での菌の増殖が抑制された。 2.カテキン(25〜50μg/ml)で一定時間前処置した細胞に菌を感染させた場合、THP-1では対照群に比し明らかな貪食能の亢進が認められたものの細胞内での菌の増殖は抑制できなかった。 3.カテキン投与マウス(P-100 500μg/マウス×3ip)から採取した腹腔マクロファージに菌を感染させたところ、貪食能および殺菌能の亢進が認められた。 4.カテキン(12.5〜50μg/ml)で一定時間前処置したGSM(マウス粘膜上皮細胞株)に菌を感染させ、その後の細胞内生菌数の変化を経時的に無処置対照群とCFU法で比較したところ、細胞内への菌の侵入および細胞内増殖を阻止できなかった。そこで次にEGCg(0.5〜50μg/ml)で一定時間前処置した上皮細胞HEp-2およびIntestine407と菌を1〜2時間接触させた後、5%CO_2下37℃で培養し、ギムザまたグラム染色を施した後、細胞内への菌の侵入および増殖の有無を顕微鏡で観察した。その結果、菌が細胞内に侵入し、細胞質内で増殖している像が多数観察された。 以上の結果、カテキンは直接・間接的にマクロファージの活性化を誘導することが示唆された。しかし非貪食細胞である粘膜上皮細胞へのSEの侵入および細胞内増殖は阻止できなかった。一方Streptomycin(SM)高度耐性のSE(臨床分離株5株:MIC>50μg/ml)に対するカテキンの直接殺菌作用は、SM感受性株に比し弱く、菌株間に差のあることが判明した。
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