日和見感染症の主要起因菌である緑膿菌は、各種薬剤に対し自然及び多剤耐性を示すため臨床的に問題である。この薬剤耐性の原因としてエネルギー依存性薬剤排出ポンプ(MexA、B-OprM)が関与していることが最近明らかとなった。内膜タンパクMexA及びMexBの膜トポロジー解析から次のことが明らかになった。(i)MexAは24番目のシスティンがリピド修飾を受けこのリピドにより内膜にアンカリングしている。(ii)MexBは12回内膜を貫通する膜タンパクであり、約300アミノ酸からなる大きな第1及び第4ループはペリプラズムに局在している。以上の結果をふまえ、本研究ではMexBの基質認識に重要な部位及びMexBとMexAの相互作用に関わる領域を同定するためにmexB遺伝子にランダム変異を導入し機能の消失あるいは低下した変異MexBの取得を試みた。約8700クローンをスクリーニングした結果24クローンの変異体を得た。変異体の塩基配列を決定したところMexB分子全体に変異が散在していた。すなわち第3細胞質ループ、第3、第4、および第10膜貫通領域、そして第4及び第10ペリプラズミムループである。これらの変異体のほとんどは野生株で発現させるとドミナントネガティブ効果を現すことから、MexAあるいはOprMとの相互作用をするのに必要な立体構造を保持していると思われた。さらに、各膜貫通領域の相互関係を調べるために、第10膜貫通領域に変異を持つmexBを出発材料にしてこの変異体のサプレッサーを選択した。独立に得られた6クローンのサプレッサー変異の塩基配列を調べた結果、すべてのサプレッサー変異が第4膜貫通領域の同じアミノ酸変異であった。以上より第4および第10膜貫通領域は膜内において互いに隣接してパッキングしていることが示唆された。
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