日和見感染症の主要起因菌である緑膿菌の薬剤耐性の主な原因としてエネルギー依存性薬剤排出ポンプ(MexA、B-OprM)が関与していることが最近明らかとなった。さらにMexA、B-OprMポンプと相同性のあるMexC、D-OprJポンプとのキメラポンプを細胞内で発現させた解析から内膜タンパクであるMexAとMexBが複合体を形成し基質認識ユニットとして機能していることが示唆された。そこで本研究では基質認識ユニットを構成するMexAとMexBの膜トポロジーを解析すると共に、ポンプ本体と考えられているMexBの機能欠失変異体の分離を試みた結果以下のことが明らかとなった。(1)MexAは24番目のシステインがリピド修飾を受けこのリピドによって内膜にアンカリングしている。そしてこのシステイン残基以降の領域はペリプラズムに局在している。(2)MexAのペリプラズムに局在している領域が機能上重要であり内膜へのアンカリングは機能上必須ではない。(3)MexBは内膜を12回貫通する膜タンパクであり、約300アミノ酸からなる第1および第4ループはペリプラズムに局在している。(4)ランダム変異導入法により得られたMexBの変異部位は分子全体(第2細胞質ループ、第3、第4、および第10膜貫通領域、そして第1及び第4ペリプラズミムループ)に散在していた。(5)MexBの第10膜貫通領域に変異を持つmexBに対するサプレッサーを選択して得られた6クローンのサプレッサー変異はすべて第4膜貫通領域の同じアミノ酸変異であった。以上よりMexBの第4および第10膜貫通領域は膜内において互いに隣接してパッキングしていることが示唆された。また、MexBの第1および第4ペリプラズムループとMexAが相互作用をして基質認識ユニットを形成している可能性が示唆された。
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