研究概要 |
ヒト血管内皮細胞(HUVEC)株のエンドトキシンによる活性化における遊離型、膜型CD14の役割をin vitro実験系で解析した。HUVECをエンドトキシンと共に培養し、組織因子(Tissue factor,TF)の産生をELISA法で測定した。HUVECを高濃度のエンドトキシンと共に培養しても、ほとんどTFの産生は認められなかった。さらに、その培養系に遊離型CD14を含むウシ胎仔血清(FCS)を1%添加しても、ほんのわずかなTFが産生されたのみであり、非働化FCSの添加ではTFの産生は誘導されなかった。そこで、われわれはHUVECにCD14遺伝子を導入し、膜型CD14を発現したHUVECを作製した。CD14の発現は免疫プロット法で確認された。CD14発現HUVECは、1ng/mlという微量のエンドトキシンに反応して、活性のあるTFを産生した。エンドトキシン添加量とともにTF産生は増加していった。この培養系に抗CD14抗体を添加すると、明らかにTF産生は抑制された。また、この活性化はFCSの添加でさらに亢進したが、非働化FCSにはそのような増強効果は見られなかった。このことから、HUVEC表面上にCD14を発現させると微量のエンドトキシンに反応し、著明なTFを産生させることが明らかとなった。さらに、この反応は、易熱性の血清成分により増強されることも明らかになった。ある状況下で血管内皮細胞にCD14が発現されれば、微量なエンドトキシンにより血液凝固が活性化され、DICなどのエンドトキシン関連病態が誘導される可能性が示唆された。
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