研究概要 |
ウシ血管内皮細胞(BAEC)をエンドトキシンと共にin vitroで培養すると、BAECはアポトーシスにより細胞死を起こす。今回、各種細胞外マトリックス(ECMC)を用いて、エンドトキシンによる血管内皮細胞傷害の抑制とその機序について解析した。エンドトキシンはBAECに対してin vitroでDNA合成の抑制とdetachmentを導くが、このBAEC傷害はマトリゲル、タイプIVコラーゲン、ゲラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、ヘパラン硫酸ペプチドグリカンをプラスチックディッシュにcoatすることにより抑制することができた。しかしながら、タイプI,VコラーゲンはエンドトキシンによるBAEC傷害を抑制できなかった。エンドトキシンはさまざまなシグナル経路を活性化し、その活性を発現する。ECMCのBAEC傷害抑制作用とシグナル経路への作用の相互作用を検討した。その結果、ECMCはp38 mitogen-activated protein(MAP)キナーゼを選択的に抑制することが明らかになった。p38 MAPキナーゼの活性化がエンドトキシンのBAEC傷害作用を誘導する可能性を検討するために、p38抑制剤の効果を検討した。p38抑制剤であるPD98059は、明らかにエンドトキシンによるBAEC傷害を抑制したが、他のMAPキナーゼ抑制剤は抑制しなかった。このことから、ある種のECMCはp38 MAPキナーゼの活性化を抑制することにより、エンドトキシンの血管内皮細胞傷害を防止することが明らかになった。
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