前年度、大腸菌由来のリピドA(ELA)はヒトおよびマウスマクロファージ両者を活性化するが、サルモネラ由来のリピドA(SLA)はヒト細胞を活性化しないという種特異性を示すこと、LPSはサルモネラ由来でもヒト細胞を活性化することを見出した。この現象を解析するために、エンドトキシン非感受性の293細胞にマウス(m)またはヒト(h)由来のCD14とTLR2を発現させた細胞を作成して、ルシフェレースレポーター活性を調べたところ、化学合成品を含む、用いたすべてのリピドAはまったく反応を示さなかったのに対して、大腸菌LPSは顕著な活性を示した。しかしLPSを界面活性剤存在下でフェノール処理で精製すると、その活性は消失した。この結果はTLR2はエンドトキシンのシグナル伝達には関係しないこと、LPSによるTLR2を介しての細胞活性化は多糖部分に含まれるLPS以外の菌体成分と思われる夾雑物によるものであることが明らかになった。一方293細胞にmTLR4とmMD-2を発現させると、どちらのリピドA刺激でも活性の上昇が見られたが、506はヒトとマウス由来のTLR4/MD-2を発現させたどちらの293細胞でも同等の効果を示したのに対して、516はヒト由来のTLR4/MD-2を発現させた細胞では微弱な効果しか示さなかった。分化させたTHP-1は、ELAとは異なり、SLAではレポーター活性の上昇が見られない。これにmCD14、mTLR4、mMD-2をそれぞれ単独で発現させてもSLAに対しては応答しないが、mTLR4に加えてmMD-2も発現させると、SLAに対しても若干応答するようになり、さらにmCD14も発現させるとSLAに対する顕著な応答が見られた。この細胞のmCD14をhCD14に置き換えてもELA、SLAの効果には影響がなく、mTLR4をヒト由来のものに置き換えると、ELA、SLAに対する応答性が共に減少し、mMD-2をヒト由来のものに置き換えると、ELAに対する応答性は変化がなかったが、SLAに対してはほとんど応答しなくなった。以上の結果から、エンドトキシンの応答性にはTLR2ではなく、TLR4/MD-2複合体が関与していること、サルモネラリピドAの動物種特異的反応にはMD-2が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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