研究概要 |
EBウイルス(EBV)はB細胞腫瘍であるバーキットリンパ腫、上皮性腫瘍の上咽頭癌、胃癌の成因に密接に関連する。これらEBV関連ヒト悪性腫瘍細胞では、従来知られる10数種のEBV潜伏感染(不死化関連)遺伝子のうち、EBNA1、EBER、LMP2A、および近年新たに同定されたBARF0遺伝子のみが共通して発現されている。現在、EBNA1、EBER、LMP2Aについてはある程度その機能が判明しているが、BARF0遺伝子の機能については全く不明である。本研究は、申請者らが独自に確立した組み換えEBV作製技術と上皮細胞へのEBV感染システムを用い、特に細胞悪性化に果たすBARF0遺伝子機能を解析した。 正常胃粘膜由来上皮細胞PGE-5(J.Virol.,73:1286-1292,1999)にBARF0を単独で導入・発現させたクローンでは、EBNA1、EBER、LMP2A単独発現クローンに比し、軟寒天中細胞コロニー形成能が有意に上昇していた。BARF0のsplice variantであるRK-BARF0も同様に有意な高コロニー形成能を示したが、我々が別に行った検討では、様々なEBV感染細胞株、および胃癌、上咽頭癌生検組織中での発現は陽性率、発現量ともにBARF0がRK-BARF0に比べて圧倒的に高いという結果を得ており、以上を総合するとEBV関連上皮性腫瘍で発現されるEBV潜伏感染遺伝子中、少なくとも上皮細胞に対してはBARF0が細胞悪性化を担っているものと考えられた。しかしBARF0単独ではEBV感染で認められた悪性形質を完全には再現できなかったことから、上皮細胞悪性化にかかわる他のウイルス遺伝子が存在することが示唆された。
|