研究概要 |
Epstein-Barr(EB)ウイルスはヒト初代B細胞をトランスフォームする試験管内発がんを起こすが、これには感染初期に同時発現される核蛋白EBNA-2とEBNA-LPが不可欠である。EBNA-2は転写活性化因子として作用する。一方EBNA-LPはEBNA-2の転写活性化を促進する補因子機能を持つ(Harada & Kieff,J.Virol.,1997)。本研究では、EBNA-LP補因子機能の作用メカニズムを解明するために、EBNA-LPと結合会合する細胞性蛋白の検索と同定を酵母のTwoハイブリッド法で試みた。(1)EBNA-LPとGal4蛋白との融合蛋白をbateとして酵母中で相互作用する細胞性蛋白遺伝子を検索したところ、数種類の遺伝子が検出された。(2)相互作用が強くみとめられたクローンの塩基配列を決定し遺伝子を同定したところ、その一つは機能不明の遺伝子であった(LPAP1と名付けた)。それは他の研究室から、あるりん酸化酵素基質と結合しミトコンドリアに局在すると報告された蛋白と同一であった。(3)免疫沈降法やGST融合蛋白とのPull-downアッセイ法で、endogenousなLPAP1とEBNA-LPとの相互作用が認められた。(4)LPAPを持続的に高発現するB細胞株の樹立を試みたが、LPAP高発現が細胞に毒性を与えるかのようにまったく細胞株は得られなかった。(5)EBNA-LPの持つEBNA-2転写活性化促進の機能にLPAP1が影響をおよぼすかどうかをルシフェラーゼアッセイで調べたところ、活性上昇・低下のいずれの影響も示さなかった。しかし、LPAPの翻訳後修飾にEBNA-LPが何らかの影響を与える事を示唆する結果が得られた。
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