研究概要 |
ヒトや動物が免疫不全の状態下におかれる場合がいろいろある。エイズウイルスなどの免疫不全症を引き起こすウイルスに感染した場合、免疫抑制剤の投与を受けている場合、新生児なども免疫不全状態下と考えられる。これらの個体で正常の個体には病原性のない微生物の感染によっても重篤な症状を引き起こす場合が知られており、日和見感染症と呼ばれている。日和見感染症の中で、発癌性のウイルスによる日和見発癌の場合がヒトエイズ患者や免疫抑制剤服用者に見られることが多い。 マウスのレトロウイルスは、内在性レトロウイルスを含め、その病原性が明らかでないものが多い。これらのウイルスは、新生児マウスに感染させても、病原性を確認できないものが多く、これまで非病原性ウイルスと考えられていた。病原性の明らかでなかったマウス白血病ウイルス株SLv-1,WN1802BやBM5eco株をBALB/cやCBA系のnudeマウスの新生児に感染させたところ、高率に白血病が発生することが明らかになった。 これらのウイルスは、BALB/cやCBAの正常新生児マウスに感染させても病原性はなく、ウイルスの増殖も弱いことが知られており、nudeマウスにおける日和見発癌と思われる。日和見発癌機構としてウイルスのnudeマウスでの増殖性の問題と、癌化細胞が個体レベルで増殖し、白血病となるための癌原性の問題が考えられる。nudeマウスに発生した白血病は大部分B系リンパ性白血病で、一部骨髄性白血病が存在する。現在nudeマウスに発生した白血病細胞染色体上でのウイルス組み込み部位を検索中である。
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