免疫不全状態下において、ウイルスの病原性は正常個体とは異なる場合が多い。ヒトや動物が免疫不全の状態下におかれる場合がいろいろある。エイズウイルスなどの免疫不全症を引き起こすウイルスに感染した場合、免疫抑制剤の投与を受けている場合、新生児なども免疫不全状態下と考えられる。これらの個体で正常の個体には病原性のない微生物の感染によっても重篤な症状を引き起こす場合が知られており、日和見感染症と呼ばれている。日和見感染症の中で、発癌性のウイルスによる日和見発癌の場合がヒトエイズ患者や免疫抑制剤服用者に見られることが多い。 SL系マウスは白血病好発系マウスとして、1960年代に日本で分離されたマウスで、骨髄性白血病が多発することが知られている。SL系マウス由来の白血病ウイルスは、他の系統のマウスに造腫瘍性が明らかではなく、造腫瘍性は弱いことが知られている。このSL系由来のマウス白血病ウイルスをCBA系ヌードマウスに感染させたところ高率に骨髄性白血病が発生することが明らかになった。この白血病について、ウイルスの染色体上の組込み場所を調べたところEviIの近傍が多いことが明らかになった。免疫不全動物における日和見発癌とEviI遺伝子との関連について検討中である。
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