本研究はC型肝炎ウイルス(HCV)コアタンパク質(以下コアと略す)による転写因子NF-kBの活性化分子機構を明らかにすることを研究の主たる目的とした。本年度はコア分子内のNF-kBの活性化領域の同定ならびに細胞のNF-kBの活性化経路におけるコアの標的因子を解析するものである。以下に本年度の研究実績をまとめる。 1.種々の欠失変異体コアを培養細胞内の様々な領域で発現させてNF-kBの活性化能を検討したところ、そのNF-kB活性化にはコアが細胞質に局在することが必要であることがわかった。 2.コアのNF-kBの活性化能と細胞内局在性の関連に関する詳細な解析からコアのNF-kB活性化にはコアの粗面小胞体膜上への局在化が重要であることが示唆された。 3.細胞質に局在させたコアの詳細な欠失変異体解析からコアの20番目から80番目のアミノ酸領域がこの活性化能の責任領域であることがわかった。 4.NF-kB応答配列をプローブに用いたゲルシフトアッセイの結果からコアの発現によってこの配列に結合する活性型NF-kB量が上昇することがわかった。 5.腫瘍壊死因子によるNF-kB活性化経路に存在する種々のリン酸化酵素の不活性型酵素を用いた活性化経路阻害実験結果から、コアによるNF-kB活性化はこの経路を介するものであることがわかった。 以上のようにほぼ実験計画通りに進行しており、現在コアによるNF-kB活性化の作用点を明らかにするため、その活性化責任領域と相互作用する細胞性因子の同定ならびに活性化の分子機構について解析を進めている。
|