研究概要 |
本研究課題は狂犬病ウイルスのRNA結合タンパク質であるNタンパクのりん酸化の意義を明らかにするものである.1)まず,この解析に用いたNタンパクを認識する種々のモノクローナル抗体のNタンパク認識の要件を調べた.その結果,りん酸化されたNタンパクのみを認識するモノクローナル抗体,およびRNA結合により熟した形状を取るNタンパクのみを認識するモノクローナル抗体に分類された.2)次に,これらのモノクロ一ナル抗体を用いて,Nタンパクのりん酸化がRNAと結合する前か後であるかについて明らかにした.まず,これらのモノクローナル抗体を用いてRNAに結合していないNタンパクおよびRNAに結合してヌクレオカプシドを形成したNタンパクに分け,モノクローナル抗体との反応性を調べた.その結果,合成されたばかりのNタンパクはまずPタンパクと結合し,りん酸化されないうちにRNAと結合しヌクレオカプシドを形成することが分かった.この実験結果はりん酸化されなくしたNタンパクの変異体を用いた実験からも確認できた.3)さらに、Nタンパクのりん酸化はRNAと結合してから行われることを明らかにした.4)また,高塩濃度下で界面活性剤を用いてヌクレオカプシドからりん酸化されたNタンパクをひき剥がすと,Nタンパクはりん酸基をつけたままで構造が元に戻り,モノクローナル抗体との反応性を失うことが分かった.5)さらに,最近になってNタンパクとPタンパクの結合体を認識するモノクローナル抗体を得ることができた.6)そこで,これを用いて実験を行ったところ,Nタンパクのりん酸化がPタンパクとの結合性の安定化に寄与することが示された.
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