本研究課題「21世紀に向けての経粘膜ワクチン:経鼻ワクチンの病理」では、経鼻ワクチン開発に向けての総括的基礎研究を行い、いくつかの重要な知見を得た。経鼻免疫は経口免疫と比較して高い抗原特異的抗体誘導能を示した。そのメカニズムは鼻関連リンパ組織(NALT)が重要な働きを担っており、特に胸腺依存抗原であるタンパク質抗原に対して重要であった。さらに鼻粘膜固有層には2種類のIgA産生細胞であるB-1細胞とB-2細胞が存在し、B-1細胞はTh2サイトカインの中でもとりわけIL-5に依存して分化・増殖の制御を受けていることが明らかとなった。それに伴い、B-1細胞のIgA産生にIL-5の関与が重要であることが明らかとなった。またTh2サイトカインの他に粘膜上皮細胞が産生するIL-15もこのB-1細胞の分化・増殖の制御の一役を担っていることが明らかとなった。さらにIL-15は、B-1細胞のIL-15レセプターの発現を誘導して細胞増殖・分化を制御しているが、IgAへのクラススイッチには影響がなかった。また、NALTの形成において、パイエル板や小腸の孤立リンパ小節を含めた全身の二次リンパ節が欠損しているリンホトキシンα欠損マウスを用いた実験においてもNALTの存在が認められた。このことからTNFファミリーのシグナルが一般に二次リンパ節の形成に必須であるのに対してNALTの形成には必要でないことが明らかとなった。現在、発生構築過程における粘膜免疫誘導組織であるパイエル板や小腸の孤立リンパ小節と比較して、NALTに特徴的な形成メカニズムの解明を行っている。
|