i)HHV-6が潜伏感染時に発現している遺伝子(潜伏感染遺伝子)の同定:この潜伏感染遺伝子は、HHV-6の増殖性感染を正方向に導く前初期遺伝子IE1/IE2の領域にコードされ、IE1/IE2の5'非翻訳領域に潜伏感染特異的な構造を持ち、IE1/IE2コード領域の上流に99アミノ酸または、142アミノ酸からなるコード領域を持っていた。また、おそらくこの構造によって、潜伏感染遺伝子からのIE1/IE2蛋白の発現は抑制されていた。ii)HHV-6の初感染時におけるマクロファージの働きの解明:HHV-6の急性感染症状である突発性発疹の患者の末梢血中の単核球を分画し、これらの分画でのHHV-6DNAコピー数、これらの分画からのウイルス分離率を検討した。この結果、マクロファージが突発性発疹患者におけるHHV-6のキャリアー細胞である事が示された。さらに、この細胞においてHHV-6のウイルス性ケモカインレセプターの発現が見られることを見いだし、HHV-6の神経向性の機序の一部を明らかにした。iii)HHV-6による免疫系の調節:HHV-6のvariant Aが樹上細胞に感染すると、MHC class Iのdown-regulationが見られることを見出した。このことは、HHV-6 variant Aが、樹上細胞において、持統感染を生じているということを示唆していた。・)HHV-6と慢性疲労症候群との関係:我々が新しく同定した潜伏感染遺伝子にコードされる17.5KDaのHHV-6潜伏感染蛋白に対する血中抗体価を測定することによって、HHV-6の感染と慢性疲労症候群との関係を検討し、慢性疲労症候群患者の約2割がHHV-6の潜伏感染と何らかの関係を持つことを示した。
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