研究概要 |
ヒトH3型インフルエンザウイルスとブタおよびウマH3型インフルエンザウイルスのHAの塩基配列の比較から、A/Memphis/1/71(H3型)株のヘマグルチニン(HA)のアミノ酸残基の中で、特に受容体結合ポケット近傍の144、145および193番目のアミノ酸残基が、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)とN-グリコリルノイラミン酸がガラクトース(Gal)にα2-3結合した糖鎖(Neu5Ac α2-3GalとNeu5Gc α2-3Gal)の認識に重要であることが示唆されている。そこで、本年度はさらにシアル酸の分子種(N-アセチルノイラミン酸とN-グリコリルノイラミン酸)だけでなく結合様式(α2-3結合とα2-6)も異なる新たに化学合成された4種類の糖脂質を用いてヒトH3型インフルエンザウイルスの結合性を比較した結果、A/Memphis/1/71(H3N2)株を除く多くの株が、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)だけでなくN-グリコリルノイラミン酸がガラクトース(Gal)にα2-6結合した糖鎖にも結合性を有することを見出した。さらにHAの塩基配列から推定されるアミノ酸配列を比較した結果、受容体結合ポケット近傍の143、144および158番目のアミノ酸残基がこれら糖鎖の認識に重要であることが見出された(FEBS Letter,464,71-74,1999)。この結果に基づいて、これらアミノ酸を点変異させたHAのcDNAを部位特異的突然変異法を用いて作製し、CV-1細胞上でインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを単独発現させた。今後、この発現系を用いてHAの結合特異性を解析する予定である。
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