本研究はEBウイルス(EBV)による細胞がん化のメカニズム解明への一段階として、EBV蛋白質の一つEBNA2(Epstein-Barr virus nuclear antigen2)の機能を、発現の制御が可能な新しいべクターを利用して解析することを目的としている。平成11年度はEBNA2によるEBV複製サイクル誘発とアポトーシス誘導のメカニズムに関して以下の実験が行われた。 1.EBV複製誘発とアポトーシス誘導に関わるEBNA2分子上のドメインの決定 RBP-J κ結合部位を欠損する変異EBNA2遺伝子を作製し、テトラサイクリン制御発現べクターに組み込み、バーキットリンパ腫細胞株Akataなどに導入したところ、RBP-J κとの結合がEBV複製サイクル誘発には必要であるが、細胞増殖抑制やアポトーシス誘導には不必要であることが示された。 2.EBNA2発現量とその作用の関係について ヒトT細胞株Jurkatに、EBNA2遺伝子をテトラサイクリン制御発現ベクターに組み込み導入した。この場合複数のクローンが得られ各々発現レベルが異なっていたため、比較検討したところ、EBNA2発現レベルの高いクローンにおいてのみアポトーシスが誘発されることが示された。 3.Akata細胞以外の細胞株に対する遺伝子導入 これまでに上記のヒトT細胞白血病株Jurkatに遺伝子導入が完了している。Akata細胞を含めたこれらのEBNA2遺伝子導入細胞において、EBNA2がc-mycなどのがん原遺伝子、サイクリンD2などの細胞周期制御遺伝子などの発現に与える影響を現在解析している。
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