本研究はEBウイルス(EBV)による細胞がん化のメカニズム解明への一段階として、EBV蛋白質の一つEBNA2(Epstein-Barr virus nuclear antigen2)の機能を、発現の制御が可能な新しいベクターを利用して解析することを目的とした。現在までに以下の結果を得ている。 1.EBV複製誘発とアポトーシス誘導に関わるEBNA2分子ドメインの決定 RBP-Jκ結合部位を欠損する変異EBNA2遺伝子を作製し、テトラサイクリン制御発現ベクターに組み込み、バーキットリンパ腫細胞株Akataなどに導入したところ、RBP-Jκとの結合がEBV複製サイクル誘発には必要であるが、細胞増殖抑制やアポトーシス誘導には不必要であることが示された。 2.EBNA2発現Akata細胞におけるCD40発現の増強 EBNA2発現誘導後2-3日後のAkata細胞において、CD40を強く発現する細胞群が出現することがflow cytometryにより示された。この現象はEBV陰性Akata細胞では認められなかったため、EBNA2により発現が誘導される他のEBV遺伝子か関与すると推測された。 3.EBNA2発現Akata細胞における細胞表面IgG発現の低下 EBNA2発現誘導後2-3日後のAkata細胞において、細胞表面IgGの発現量が著名に低下していることがflow cytometryにより示された。この現象はEBV陰性Akata細胞でも認められたため、他のEBV遺伝子を介さないEBNA2の直接の作用と推測された。 4.EBNA2発現Akata細胞におけるc-Myc発現の低下 EBNA2発現誘導後1-2日後のAkata細胞において、c-Mycの発現が著名に低下することがウエスタンブロット法により示された。EBNA2によるAkata細胞の増殖抑制には、このc-Myc発現の低下が関わることが推測された。
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