研究課題/領域番号 |
11670307
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
宮澤 正顯 近畿大学, 医学部, 教授 (60167757)
|
研究分担者 |
阿部 弘之 近畿大学, 医学部, 助手 (80309335)
田端 信忠 近畿大学, 医学部, 講師 (40298948)
松村 治雄 近畿大学, 医学部, 講師 (10229536)
|
キーワード | レトロウイルス / ワクチン / Tリンパ球 / 抗原エピトープ / 白血病 / 細胞傷害反応 / ナチュラルキラー / 感染防御 |
研究概要 |
フレンド白血病ウイルスenv遺伝子産物上に我々が同定したヘルパーT細胞認識エピトープを単独で含む合成ペプチドワクチンで、このウイルスに感受性の高い(BALB/c×C57BL/6)F_1マウスを免疫した。免疫マウスに致死量のフレンドウイルスを接種すると、アジュバントのみを投与したマウスは50日以内に全個体が死亡したが、ペプチドを投与したマウスはウイルス接種60日後にも80%以上が生存していた。また、ペプチド投与群ではウイルス接種後早期に感染細胞が排除され、脾腫発症も認められなかった。 ペプチドワクチンでCD4陽性Tリンパ球が感作された動物で、フレンドウイルス接種後に誘導される感染細胞排除のエフェクター機構を解析するため、免疫マウスにフレンドウイルスを接種後、経時的に脾細胞を採取し、フレンドウイルス誘発白血病細胞を標的とする細胞傷害試験を行った。その結果、ウイルス感染初期にCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が活性化されるほか、ペプチドワクチン投与マウスに限ってウイルス抗原特異的なCD4陽性CTL活性も誘導されることがわかった。更に意外なことに、フレンドウイルス接種後7〜9日目に誘導される細胞傷害活性の主体を占めるのは、CD4,CD8が共に陰性の細胞群であった。 フレンドウイルス感染後に誘導され、フレンド白血病細胞傷害活性を示すCD4/CD8陰性細胞分画の実体を解明するため、ペプチド免疫マウスにフレンドウイルスを接種後、脾細胞からマウスNK細胞マーカーDX5を発現する細胞群を分取したところ、複数のフレンド白血病細胞株及びYAC-1細胞に対し強い傷害活性を示した。更に、ペプチドワクチン免疫マウスより、抗アシアロGM_1抗体投与によってTリンパ球機能に影響を与えずにNK細胞のみを取り除くと、ワクチンで誘導されたフレンドウイルス感染抵抗性が完全に失われた。 以上の実験事実から、フレンドウイルス感染の初期にはNK細胞が活性化され、フレンドウイルス感染細胞はNK細胞による傷害に感受性であること、ヘルパーT細胞認識エピトープを単独で含むペプチドワクチンによるフレンドウイルス感染防御には、CD4及びCD8陽性CTLと共に、NK細胞の機能が必須であることが明らかとなった。
|