研究概要 |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のウイルス粒子はGag及びGag-Pol前駆体蛋白からなるドーナツ状の未成熟型(非感染性)ウイルス粒子として出芽し、粒子内在のウイルスプロテアーゼ(PR)によるprocessingを受け、Gag蛋白がMA,CA,NC,p6蛋白に、Pol蛋白がPR,RT(逆転写酵素),IN(インテグラーゼ)蛋白に切断された形態の異なる成熟型(感染性)ウイルス粒子へ変換される。この粒子成熟を試験管内で再現する目的で、未成熟型HIV粒子(未切断のGag蛋白コアをもつ)に精製HIVPRを添加し、成熟型粒子への変換を検討した。1)processing反応の塩濃度とpHを検討したところ、酸性かつ低塩濃度ではGag蛋白は完全切断されたが、高塩濃度ではその切断速度が遅延し、中性〜塩基性ではほとんど切断されなかった。いずれの条件でも、MA/CA部位が最初に切断され、切断順序は変化しなかった。2)Pol蛋白領域の切断ではRTはこのprocessingした粒子のコアから解離せず保持されていることが判明した。しかしながら、IN蛋白については特異的抗体がないため検討できなかった。3)これらの粒子を蔗糖密度勾配遠心及び電顕で観察したところ、いずれの場合も、outer shell(MA蛋白からなる)と濃縮したコア(NC蛋白とRNAの複合体)形成が認められたが、CA蛋白からなるcapsidは不安定であり、その構造はすみやかに消失した。4)エンベロープ蛋白を粒子に保持させたまま脂質二重膜をdisruptする条件を見いだす目的で、低濃度の界面活性剤・超音波処理などを検討したところ、0.1%DigitoninあるいはTritonX-100処理では、エンベロープ蛋白を損失することなくコアのGag蛋白切断が可能であることが判明した。3)感染性獲得について検討する目的で、まず、PR活性中心アミノ酸を不活性型に変異させ、かつ、エンベロープ蛋白領域をGFPに置換したcDNAクローンを作製した。これとVSVG蛋白発現plasmidをco-transfectionして得た未成熟型pseudotype粒子を用い、試験管内processingを行った。
|