IL-7はリンパ球前駆細胞の増殖因子であり、生体内におけるリンパ球の分化にきわめて大きな役割を果たしている。本研究の目的は、IL-7レセプター(IL-7R)のシグナル伝達分子のStat5によるヒストンのアセチル化の誘導が、TCRγ遺伝子座のDNA組換え酵素に対するaccessibilityを上昇させV-J組換えを誘導することを証明することにある。 まず、IL-7Rにより活性化されたStat5が、Jγ1の上流のモチーフに結合し、TCRγ遺伝子のgermline転写を誘導することを示した。次に、IL-7R欠失マウスの胎児肝臓のT前駆細胞にレトロウイルスを用いてStat5 cDNAを導入し、胎児胸腺器官培養でT細胞に分化させると、活性型Stat5を導入したものでは細胞数がある程度回復し、γδT細胞の分化が見られた。次に、Stat5が転写共役因子であるCBPやp300と協調して転写を活性化するかを調べた。5'Jγ1プロモーター領域をBa/F3細胞に導入すると、Stat5依存的およびCBP/p300依存的に転写が活性化された。また、Ba/F3細胞でJγ1領域特異的にヒストンがアセチル化されていることが、染色体免疫沈降法により示された。また、BaF3/pim-1細胞でサイトカイン刺激依存的にStat5とCBP/p300がJγ1領域に結合し、ヒストンがアセチル化されることを確認した。さらに、Ba/F3細胞にRAG1とRAG2を一過性に発現させると、Jγ1遺伝子のみでDNAの切断が起ることが、LM-PCR法にて示された。以上のことから、Stat5が転写共役因子を5'Jγ1プロモーター領域にリクルートし、ヒストンのアセチル化を介してTCRγ遺伝子座のaccessibilityを上昇させることが示された。
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