研究概要 |
免疫系は生体防御に有用な一方で、その異常亢進は様々な免疫病を引き起こし生命のリスクとなる。従って、免疫系を負に制御する機構は重要と考えられる。LC-PTPは、リンパ球に選択的に発現するチロシン脱リン酸化酵素(protein tyrosine phosphatase,PTP)で、MAPキナーゼ(MAPK)と結合し、これを直接抑制する。本年度は、LC-PTPの制御機構について以下の点を明らかにした。 (1)発現制御機構の解析。LC-PTPに対するモノクローナル抗体を作成し、マウス正常Tリンパ球での発現を検討した。LC-PTPタンパクは、抗原受容体(TCR)刺激前から存在していたが、TCR刺激後ゆっくり増加し、2〜3日でプラトーに達した。これは、mRNAの変化とほぼ並行していた。CD44^<high>のメモリーT細胞でも、LC-PTPは増加していた。 (2)リン酸化による制御。Tリンパ球の抗原受容体刺激後、LC-PTPがリン酸化されること、それが、MEK(MAPKK)阻害剤で抑制されることを明かにした。LC-PTPのリン酸化は、活性型MEKと野生型ERKの共発現でも生じたが、酵素活性のない変異型ERKでは生じなかった。LC-PTPのThr66とSer93をAlaに置換するとリン酸化は殆ど認められず、主要リン酸化部位と考えられた。この変異型LC-PTPは、in vivoでのERK抑制作用が減弱しており、リン酸化に調節的な意義があると考えられた。 (3)sem型MAPKのJurkat細胞での機能亢進。LC-PTPと結合せず抑制を受けない、sem型変異を導入したp38を作成した。内在性LC-PTPを発現するJurkat細胞で、sem型p38は野生型p38に比べて機能亢進を認め、MAPK抑制機構の意義を検討する上で有用なプローブと考えられた。
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