T細胞レセプター・シグナル伝達における糖脂質濃縮膜画分(GEM)の機能解析

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11670319
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 小杉 厚 大阪大学, 医学部, 助教授 (90186685)
• キーワード: T細胞 / TCRシグナル伝達 / Lipid、Raft / LAT / GFP / 凝集

研究概要

研究代表者は、TCRシグナル伝達における脂質マイクロドメイン(Lipid Raft)の重要性を報告してきた。今年度は、TCR刺激後のRaftの動的変化に関して以下の研究を行った。
Raftに局在することが知られているアダプター分子・LATのC末端にGFPをつないだ融合遺伝子を構築し、この融合分子を恒常的に発現するJurkat細胞由来のtransfectantを樹立した。このtransfectantと抗CD3抗体を吸着させた抗CD3ビーズとを反応させると、ビーズ周囲にRaftが凝集する結果としてLAT/GFPの斑点(パッチ)が形成される。このパッチはRaftのマーカーであるCTx-Bにも反応し、またパッチ形成は抗CD3ビーズ刺激に特異的であった。すなわち、抗CD28ビーズや抗LFA-1ビーズにて刺激してもパッチ形成は見られなかった。従って、TCR刺激後T細胞膜においてRaftが凝集し、光学顕微鏡で検出可能なパッチがTCR刺激部位に認められるようになることが示された。この実験システムを使ってTCR刺激後のRaftの動的変化を、Photobleaching後の蛍光物質の回復を測定する方法(Fluorescence Recovery after Photobleaching:FRAP)にて解析した。その結果、パッチ内に局在するLAT分子は他の細胞膜に存在するものよりも可動性が少なく、一旦パッチが形成されるとそこに局在する分子は比較的安定してその部位に留まっていることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] Kosugi A. et al.: "The process of GEM/Raft-mediated lymphocyte activation"Rec.Res.Dev.Immunol.. VolI.PartII. 453-462 (1999)
• [文献書誌] Yasada K. et al:: "Semne 6 of LCK tyrosine kinase : a critical site for LCK myristoylation, membrane localization, and funiction in T lymphocytes"J.Immunol.. 165. 3226-3231 (2000)
• [文献書誌] Umeda Y. et al.: "Non-viral gene gun-mediated CTLA4-Ig gene transfer for medification of donor organs"Transplantation Proc.. 33. 243-245 (2001)
• [文献書誌] Kosugi A. et al.: "A pivotal role of cysteine 3 of LCK tyrosine kinase for Localization to glycolipid-enriched microdomains and T cell activation"Immunology Letters. 7612. 133-138 (2001)
• [文献書誌] Fujimoto H. et al.: "Down-regulation of α6 integrin, an antioncogene product, by functional cooperation of H-Ras and c-Myc"Genes to Cells. (in press).