αβT細胞受容体(TCR)は、その遺伝子の再構成とat randomな塩基の挿入、欠失により理論上10^<15>を越える多様性を獲得するが、末梢で免役応答に寄与するαβTCRは免役寛容および主要組織適合抗原(MHC)拘束性を示すという点で高度に選択されている。これは、胸腺内T細胞分化過程において、CD4^+CD8^+胸腺細胞がそのTCRによるMHC/自己抗原ペプチド複合体認識の結果、正と負の選択を受けることに起因している。このように、胸腺内T細胞分化過程において、CD4^+CD8^+胸腺細胞は、'分化'あるいは'死'という相反する運命が決定される最も重要な分化段階である。 本研究において、我々はCD4^+CD8^+胸腺細胞に特異的に反応する単クローン抗体1D11を樹立解析し、その抗体が認識するリガンドを同定することで、TCR-MHC/自己抗原ペプチド複合体相互作用を欠くCD4^+CD8^+胸腺において特異的にThy1分子の凝集がおこることを見出した。 一方、正の選択おける自己抗原ペプチドの関与をより明確にするために、1アミノ酸残基のみ異なる2つの自己抗原ペプチドを単一MHC/ペプチド複合体として発現するトランスジェニックーノックアウトマウスを樹立した。それぞれの複合体により形成されたT細胞レパートリーを詳細に解析することで、アミノ酸残基の側鎖の大きさや荷電の有無が選択されるT細胞レパートリーの多様性に多大な影響を与えることを明らかにした。
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