α4分子はB細胞抗原レセプター(BCR)からのシグナル伝達に関与する分子として私たちがクローニングした。これまでにα4はプロテインホスファターゼ2A(PP2A)と結合し酵素活性を調節すること、ラパマイシン感受性シグナル伝達経路に位置することを明かとしてきた。α4はubiquitousに発現しBCRシグナル伝達経路以外にT細胞活性化においても機能を有することを示してきた。本研究ではα4のB細胞活性化における役割をin vivoで明かとする目的でB細胞特異的にα4遺伝子を破壊することを試みている。 本年度はまずα4と高い相同性を有する遺伝子を発見しクローニングしてα4-bと命名した。α4-bは脳、精巣特異的に発現しα4とアミノ酸レベルで60%相同性がある。α4と同じくPP2Aと結合することから脳、精巣でPP2Aの制御に関与すると予測される。 次にB細胞活性化におけるラパマイシン感受性シグナル伝達経路について解析した。ラパマイシンはBCR刺激による増殖を抑制するのみならずB細胞活性化分子の代表の一つであるCD40刺激による増殖も抑制した。更にCD40シグナルによる抗体産生細胞への分化も抑制した。この結果はα4分子がBCRのみならずB細胞の他のシグナル伝達経路にも関与する可能性を示唆する。 α4遺伝子破壊の研究では、α4遺伝子のエクソン1と2の両側にlox Pサイトを持つターゲティングベクターをES細胞に導入して相同組み換え体を得た。このES細胞由来のキメラマウスを作製しC57BL/6マウスと交配してα4遺伝子のエクソン1と2の両側にlox Pサイトを持つマウスα4 floxマウスを作製した。今後このマウスとB細胞特異的にCre遺伝子を発現するCD19-Creマウスを交配してB細胞特異的にα4遺伝子の破壊されたマウスを作製しα4分子のB細胞活性化における役割を明かとしていく。
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