研究概要 |
これまでに不明であった粘膜免疫組織一次免疫反応における記憶B細胞の産生と動態を解析する目的で、C57BL/6マウス鼻腔粘膜免疫組織(nosal-associated lymphocytic tissue,NALT)を微量のコレラトキシンとハプテンNP-CGで一次刺激し、産生される胚中心及び記憶B細胞の動態を免疫学的方法を用いて解析した。この結果、免疫後7-9日をピークとしてIgA,IgG,IgM陽性胚中心B細胞が増殖するが、抗体産生前駆細胞の産生は少ないことが示唆された。免疫後7-11日にかけての胚中心B細胞をFACSを用いて精製・純化し、NP特異的IgA,IgG発現遺伝子の塩基配列をPCRにより決定した。その結果、胚中心反応初期にIgA陽性B細胞でIg遺伝子に体細胞変異が導入され、約2割のクローンで高親和性の獲得に関与する塩基置換が認められた。一方、NALT IgG主要細胞であるIgG2b B細胞のIgにおいても体細胞変異が導入されるが、高親和性獲得に関与する変異の導入時期はIgA B細胞がIgG B細胞と比較し早期に導入されることが明らかとなった。粘膜を介した刺激で産生された記憶B細胞は粘膜局所に留まるとともに粘膜以外のリンパ組織(脾臓)へ移動し長期に維持され、同一抗原2次免疫により高親和性を有するIgA抗体産生細胞へと成熟することが示唆された。IgG記憶B細胞も抗体産生細胞へと成熟するが、抗体の親和性はIgAと比較して低値である。これらの結果は、粘膜免疫反応において、IgA B細胞がIgG B細胞と比較してより優位に高親和性を有する記憶B細胞として選択される可能性を明らかにした。
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