(本年度の目的)l.交代制勤務による個体の自律神経系への不均衡の発現と再適応の時系列的変化、及びその際の外的同調因子の特徴を明らかにする。2.作業者の日常生活習慣、自律神経系の測定結果と自覚症状出現の関連から効果的な作業スケジュール・生活指導管理を行い検討する。 (対象)某鋼管製造工場の製造工程に従事する男性従業員124名を対象とした。 (結果・考察) 1.自律神経機能測定…唾眠中の交感神経系は夜勤2日目が昼勤3日目に比べ有意に低く、夜勤4日目では昼勤時と同程度まで上昇し、夜勤に対する慣れによる経時的適応の存在が推測された。 2.自覚症状・睡眠状態の調査…自覚症状は勤務態様による違いはなく、唾眠感では夜勤2日目に比べ4日目で改善が見られた。 3.日常生活習慣の調査…GIIQより交代制勤務者の方が精神的身体的健康度が良好であった。これより交代制勤務への慣れや、日勤帯と夜勤帯における労働環境などの諸要因についてもGIIQに影響を与える要因として考慮する必要性があると考えられた。また、HPIでは常日勤者が良い生活習慣を持ち、WSCより勤務態様による違いはなかった。 4.後ろ向き追跡による血圧変動の調査…収縮期・拡張期血圧ともに勤務態様による有意差は認めなかった。これは近年取り上げられているヘルシーワーカーエフェクトに一致すると考えられた。 5.健康教育介入効果の調査…血圧・BMIともに勤務態様による有意差は認められなかったが、自覚症状、睡眠感、健康習慣が有意に改善した。 (総括)交代制勤務による自律神経系の経時的変化を定量的に確認し、主観的睡眠感も夜勤に再適応することが明らかになった。交代制勤務への健康教育・日常生活指導への介入の効果は、短期的には主観的な改善を認めた。今後の研究として、長期的な指導の継続による介入の効果を追跡調査し、さらなる検討を継続する。
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