研究概要 |
平成11年度に引きつづき,千葉県内の自動車交通量の多い地区に位置する小学校の4年生のうち,保護者の承諾が得られたものを対象に,ピークフローおよび1秒量の自己測定,血清総IgE,ダニ特異的IgE抗体の測定を行った。肺機能測定は,各学校ごとに21〜23日間,起床時と就寝前に実施し,検査前72時間平均の大気中浮遊粒子状物質(SPM)及び二酸化窒素(NO_2)濃度との関連を検討した。 2年間合わせて,ピークフロー・1秒量の自己測定は361名,採血は373名について実施し,両者の結果が得られたものは308名である。SPMの検査前72時間平均濃度とピークフロー値との関連は,起床時18名,就寝前18名で有意な負の相関,1秒量とは起床時14名,就寝前14名で有意な負の相関が認められ,大気汚染濃度の増加により肺機能値が低下することが示された。NO_2濃度とピークフロー値との関連は起床時17名,就寝前14名,1秒量とは起床時14名,就寝前10名で有意な負の相関が認められた。 喘息・喘鳴症状を有するものは111名であり,このうち起床時の肺機能値がSPM濃度の増加により有意に低下したものは13.5%,NO_2濃度の増加により有意に低下したものは12.6%であり,症状のないもの(それぞれ6.1%,7.0%)に比して有意に高率であった。血清総IgE高値のもの,ダニ特異的IgE抗体陽性のものも,起床時の肺機能値が大気汚染レベルの増加により有意に低下するものの割合が高かった。就寝前の肺機能値の変化と喘息・喘鳴症状の有無,血清IgE値との関連は認められなかった。 以上より,喘息・喘鳴症状を有するもの,血清IgE高値のものは自動車排出ガス由来の大気汚染物質であるSPM及びNO_2への曝露により気道閉塞が起こりやすいことが示唆された。これらの変化とアレルギー素因,気道過敏性との関連をさらに詳細に検討する予定である。
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