本研究は、わが国における飲酒および喫煙行動を規定する社会、経済および生活因子を明らかにし、これらによる疾病の予防および対策に寄与することを目的として行なわれた。具体的には、(1)全国の都道府県別のアルコールおよび煙草消費量に最も強い影響を及ぼす社会、経済および生活因子(所得、人口構成、教育など)、(2)同じく、過去から現在に至るアルコールおよび煙草消費の変化に影響を与えた因子、さらに、(3)地域や職域の集団で、アルコールおよび煙草消費量を規定する因子(職場「文化」、生活習慣、ストレスなど)を明らかにすることであった。このために、(1)飲酒および喫煙行動と社会、経済および生活因子に関する文献を収集し、解析に用いるべき因子を検討し、(2)都道府県別の年間アルコール消費量(国税庁統計年報)、性、年齢別人口構成および杜会、経済および生活指標(総務庁杜会生活統計指標)を入手し、コンピューターの統計パッケージで使用できるように入力し、さらに、(3)これらを統計学的に解析した。研究成果は原著論文として専門誌に発表し、また、学会等で報告した。これらにより種々の杜会因子が日本人の飲酒ならびに喫煙に影響を及ぼしていることが明らかとなった。 さらに心理的な因子の影響も無視できない。これらに応じた公衆衛生学上の対策が必要とされると思われる。現在、過去30年にわたる日本人の飲酒パターンについて検討を行なっており、さらにいくつかの疾病及び事故による死亡と飲酒、喫煙との関係に関する疫学的検討をすすめており、近日中に論文を作成し投稿する予定である。
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