肝機能の新たな、かつ肝特有のより鋭敏な指標を見つけだすために、四塩化炭素腹腔内投与により急性肝障害を誘発させたラットを用い、投与24時間後における血中および肝臓中Cystathionine γ-lyase(γ-lyase)とGOTおよびGPT活性値の変化を比較し、さらに、肝細胞障害によって変動する肝蛋白質の検出を試み、 1).γ-lyase活性は、コントロールラットの血中には全く検出されず、四塩化炭素投与ラットの血中濃度は極めて高く、かつ投与直後の時間から検出されること 2).有機リン剤投与により運動失調と麻痺を伴う中間症候群を誘発したウズラでは、肝障害が見られないにもかかわらず血中GOT値の上昇が認められたが、血中γ-lyase活性はほとんど認められなかったことより、肝臓以外の臓器疾患ではGOT値の上昇が認められることもあるが、γ-lyase活性値はほとんど認められず、γ-lyase活性値の上昇は肝疾患特有の有用な指標になりうること 3).リソゾーム酵素の一つであるArilsulphatase活性を見てみると、コントロールラット肝臓よりも四塩化炭素投与ラット肝臓では約25%の増加が見られ.また肝臓中遊離アミノ酸濃度では70%の増加が見られたことより、四塩化炭素投与ラットの肝臓では蛋白質分解能が亢進していること 4).四塩化炭素投与により肝臓において観察された現象が、エチオニン投与により誘発された肝障害でも認められること 以上の4点が立証され、肝細胞障害を研究する上で新たなアプローチが開かれた。
|