本症例対照研究では、発癌物質の代謝活性化に関与するcytochrome P450(CYP)の中で、飲酒により酵素誘導が起こり、ニトロソアミンなどの代謝活性化に関与するCYP2E1、代謝活性化された発癌物質(芳香族アミンなど)の不活化に関与しているN-acetyltransferase(NAT)の中でNAT2に注目し、両酵素の遺伝子多型および飲酒・喫煙習慣が肝細胞癌(以下肝癌)の発生リスクにどの様に影響しているか、を検討する事を目的とした。肝癌患者は九大病院および福岡市内の基幹病院の入院患者(目標数100名)から選定し、対照者は保健所の成人健診受診者(目標数400名)より選定する様に計画した。科研費交付内定通知が平成11年10月末であった事もあり、今年度は肝癌患者20名・対照者40名前後の調査を行う予定であった。研究協力機関との交渉、調査票の開発、研究に係る同意書の作成、遺伝子多型の予備実験などを終了し、平成12年2月より開始する様に準備を進めた。しかしながら、厚生省より平成12年2月「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針(案)」が公表され、研究の開始に当たって、学内の倫理委員会の承認が不可欠と考えられたため、現在このための準備を進め、調査開始を延期している状況である。対象者の調査開始は平成12年度となる見込みである。
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