本症例対照研究では、発癌物質の代謝活性化に関与するcytochrome P450(CYP)の中で、飲酒により酵素誘導が起こり、ニトロソアミンなどの代謝活性化に関与するCYP2E1、代謝活性化された発癌物質(芳香族アミンなど)の不活化に関与しているN-acetyltransferase(NAT)の中でNAT2に注目し、両酵素の遺伝子多型および飲酒・喫煙習慣が肝細胞癌(以下肝癌)の発生リスクにどの様に影響しているか、を検討する事を目的とした。年度当初、研究代表者は九州大学大学院医学研究院に所属していたが、平成12年9月より佐賀医科大学に転任となり、佐賀医科大学病院において調査を開始するための準備を進めた。肝癌患者群は佐賀医科大学内科受診者(目標数100名)、対照群は佐賀医科大学総合外来受診者(目標数200名)より選定する事とした。対象者選定のための協力各科の予備調査(年間患者数、総合外来受診者の性・年齢分布および疾病特性など)、飲酒歴・喫煙歴などの生活習慣に関する調査票の開発、九州大学よりの実験機器(サーマルサイクラーおよび超低温槽)の移管を含む実験環境の整備、薬物代謝酵素(CYP2E1およびNAT2)の遺伝子型決定のための予備実験を行った。本年度の研究費は、主に検査試薬・実験器具に充当した。研究計画について佐賀医科大学倫理委員会の承認を受けた後、対象者の調査を行った。
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