研究概要 |
呼吸器感作性を予知評価するための有効な免疫学的指標を見い出すために、本年度は、血清と気管支洗浄液(BAL)におけるサイトカインの産生パターンの評価法としての有用性の検討を中心に行った。 マウス(雌性BALB/c系;1群6匹)に対し感作物質をの鼻腔内投与にて感作・誘発を行う実験系を用い、呼吸器及び皮膚感作性物質として、それぞれ無水トリメリト酸(TMA)とピクリルクロライド(PC1)を使用した。誘発18日前から5日間の感作処理をし、誘発前14,13,11,8,5日目と、誘発直前および誘発3,6,12時間後、1,2,3,4,10,20日目に血清とBALのサイトカインの産生を経時的にELISA法で検索した。各時点の動物群(6匹)を用意した。(1)血清中のIL-4は、感作後一定のレベルを維持し誘発3時間後にピークを示しその1日後には速やかに低下した。IL-5は、誘発1日後ピークを示しその後緩やかに下降し3日目に誘発前のレベルに戻った。IFN-gamma産生レベルは感作後対照群より高レベルを維持し、誘発直後のピークはあったものの顕著ではなかった。(2)BALのIL-4の推移は,1日後をピークとし、3日後には誘発前レベルに戻った。IL-5も1日後にピークとなったが、血清中と同様にその戻りは緩慢であった。IFN-gammaは感作後若干上昇したが、その後低下し対照群との差異を見出し難く、誘発時に再度上昇するも4日後には同レベルに戻った。TNF-alphaは感作後徐々に上昇し誘発1日後にピークを呈し徐々に低下した。(3)背部塗布による感作群では、血清およびBAL中のほとんどのサイトカインは対照群と差異を見出し難かった。(4)PCLにより同処理した動物群では、血清中では、感作後IFN-gammaの上昇が顕著で、IL-4も検出された。誘発3時間後に弱いピークを呈した。IL-5は検出されなかった。以上の結果より、血清とBALのELISA法によるサイトカインの産生パターンによる呼吸器感作評価の可能性は示され、指標としてBALにおけるIL-A,IL-5,IFN-gammaが適切と思われた。
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