研究概要 |
呼吸器感作性を予知評価するための有効な試験法を開発するための基礎資料を得るために、適切な感作・誘発方法と免疫学的指標の検討を行った。呼吸器感作物質としてトルエンジイソシアネート(TDI)等、また皮膚感作物質としてピクリルクロライド(PCI)を使用した。感作は、吸入曝露法と塗布曝露法で種々の曝露スケジュールを設定し、誘発は吸入法で行った。解析項目は、血清総IgE抗体、血清中サイトカイン(IL-4,IFN-gammaなど)、気管支肺胞洗浄液(BALF)中サイトカインおよびin vitro PHA刺激脾細胞産生サイトカインとし、それぞれの比較検討を行った。 その結果、4日連日感作曝露を6日間の休息を挟んで2回繰り返した後7日目に誘発を行う方法により、総IgEの有意な上昇が確認され、マウスの脾細胞におけるサイトカイン解析の最も安定した成績が得られた。すなわち、誘発24、48時間後にIL-4およびGM-CSF等のTh2タイプのサイトカインの有意な産生がみられるとともに、Th1タイプのIFN-gammaは上昇するが未感作群との差異を見いだしがたい、という各サイトカインの産生パターンが得られた。また、この産生パターンは、感作処置が吸入あるいは塗布法であっても得られた。なお、BALの解析では、TDIについてはその強い感作性のためか未感作群に対してもサイトカイン産生を発動させ、その産生パターンの解釈を混乱させた。 以上の結果より、呼吸器感作物質の評価試験法として、感作方法は、吸入法あるいは塗布法で行い、血清総IgE抗体の上昇を確認し、感作開始から約20日後に脾細胞におけるPHA刺激サイトカイン(IL-4、GM-CSFおよびIFN-gamma)産生パターンを評価指標とすることが、有用であることが示唆された。
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