研究概要 |
In vivo実験により,トリクロロ酢酸のアサリ体内での動態を検討している.本研究におけるアサリの飼育は10℃温度設定のインキュベーター内で行った. まず,トリクロロ酢酸のアサリ体内への取り込みを検討した.トリクロロ酢酸水溶液10,1,0.1mg/l中にアサリを入れ,24時間飼育して,飼育後速やかに冷凍した.解凍後,殻内全量(肉部と体液)をホモジネート(ポリトロン・ホモジナイザーを使用)した後,トリクロロ酢酸の分析(M Gotoh, T.Hobara, H.Kobayashi, M. Okuda : Pollution due to trichloroacetic acid in clams (Tapes japonica) in an estuary adjacent to industrial areas. Bull. Environ. Contami. Toxicol., 60(1), 74-80, 1998)を行った.結果,全ての濃度の実験区において,体内への取り込みが認められた.特に低濃度の場合において顕著な傾向を示した.また,肉部を出入水管,足,中腸腺および外套膜の4部位に解剖して,部位別にトリクロロ酢酸の分析を行い,各部位の濃度分布を測定した.成績は,出入水管において高率の分布が認められた. 現在は,アサリを10℃の温度設定条件下のインキュベーター内で,長期間(7〜14日間)飼育を行い,(1)トリクロロ酢酸の体内蓄積,(2)トリクロロ酢酸の体外排泄,(3)ジクロロ酢酸等他化合物への代謝の可能性について検討している.(3)におけるジクロロ酢酸等の生成化合物はガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)で定性の確認を行う計画である.今後は,取り込み・蓄積・排泄係数の数理モデルを開発することを考えている.
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