研究概要 |
断続的寒冷曝露がもたらす身体冷却の特徴と問題点を明らかにするために、健康な成人男性を対象に休憩・休止条件をはさんで手指および全身を断続的に冷却する実験を行った。また、冷凍工場、冷凍食品工場等を対象とした現場調査を行い、実際の寒冷作業の実態と問題点を調べた。以下に、得られた主な研究成果を要約する。 1.手指の断続的冷水浸漬実験:10℃の冷水に休憩をはさんで繰り返し手指を浸漬した時の凍傷防御反応と主観的負担(手指の寒冷痛、温冷感覚)の挙動を、異なる室温条件(20,25,30℃)と異なる衣服条件(薄着、中着、厚着)で調べた。軽度な低温(20℃)や薄着条件では、休憩をはさんでも手指冷却を繰り返すことで、手指の冷却が進行し、凍傷防御反応が有意に抑制された。にもかかわらず、寒冷感覚や寒冷痛などの主観的負担は冷水浸漬を繰り返す毎に漸減し、休憩時には完全に消失することが明らかになった。 2.全身の断続的寒気曝露実験:10℃と5℃の寒気の繰り返し曝露を、温暖休憩条件(30℃)をはさんで実施して、身体冷却の特徴と生理的・心理的負担の挙動を解析した。温暖休憩をはさんでも深部体温は低下し続け、循環系負担の増大と手指作業パーフォーマンスの低下がみられた。寒冷感、不快感、温熱追求行動のモティベーションなどは寒冷曝露を繰り返す毎に増強したが、温暖休憩時には深部体温が低下しているにもかかわらず全く消失することが明らかになった。 3.以上の局所および全身の断続的冷却実験により、温冷感や快適感などの主観的反応が、身体冷却の進行を監視・警告する鋭敏な指標にならない場合があることが示された。 4.このような主観的知覚と温熱生理的状態値の解離は、現場調査でも一部確認され、作業者の主観的判断や知覚に依存しない防寒対策や作業-休憩スケジュールの設定の必要性が示された。 これらの研究成果は、国内外の関連学会等で発表し、原著論文としてまとめつつある。
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