研究概要 |
明らかな疾患を持たない(高血圧を除く)習慣的喫煙者と非喫煙者において,酸化リン脂質代謝酵素である血漿platelet-activating factor acetylhydrolase(PAF-AH)活性欠損をもたらす遺伝子変異の頻度を比較した.その結果,現在まで,両群間に明確な差は認められていない.しかし,これらの対象のうち,遺伝子型が正常の場合,高血圧や高脂血症など動脈硬化の危険因子を有している群では有しない群に比べて,血中のPAF-AH活性が高く,これらのストレスによる酵素の誘導があるものと考えられた.一方,遺伝子変異を有する群ではこのような差がみられず,酵素の誘導が不十分であることが確認された.このことが従来認められている,本遺伝子変異を血管障害との関係の基礎になっているものと推定された. また,試験管内でのオゾン処理によって酸化し,高速液体クロマトグラフィーで分画したリン脂質について血小板擬集を指標に活性脂質の生成を確認した.この酸化リン脂質を用いて培養ヒトアストロサイトに対する作用を検討した結果,一部の分子種に神経栄養因子や血管内皮増殖因子の産生刺激活性を認めた.現在,その特異性や機序,分子種の同定等について検討を進めている.
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