研究概要 |
平均余命の延長は活動的な生存期間が延長した結果なのか、寝たきりなど障害や介護を必要とする期間が増えた結果なのか、延長した余命の量と質に関する評価を適正に行い、地域における看護・介護ニーズの質と量の予測システムを構築するための基礎的研究を行うことを目的として以下の研究を行った。 なお、研究を行うにあたり、香川県内のS町(人口数約6000人、老年人口割合24.5%)の全面的協力を得ることができた。 (1)損失生存可能年数の算出に必要な死亡状況把握 死亡票を基に平成4年から10年までの65歳を基準とする早死損失年(PYLL(65))を求めると、人口千対52.2,51.8,45.9,30.6,31.8,8.6,22.0,31.9となっていた。PYLL(75)では、86.5,88.2,86.7,60.6,62.9,29.1,56.6となっていた。なお、人口約6000人程度の町では、男女別や死因別での検討を行おうとすると、対象人数が少なくなり、このような健康に関する指標の小集団への応用の検討課題であると思われる。 (2)要介護者の推計 平成10年度の調査を元に、S町の将来総人口の推移と要介護者の発生状況を平成12年から平成16年まで推計した。その結果、人口千対30.6,31.4,32.4,32.0,32.2となっていた。さらにこれらの結果を基にホームヘルプサービス必要量を推定した結果、529,542,555,550,559となっていた。 (3)地域住民の自立度・健康度並びに障害者へのサポート状況を把握するための質問票を用いた調査 町内の65歳以上者(高齢者)全員(1214)名と40歳以上65歳未満(若年者)の430名に対して質問票を用いた調査を行った。その結果高齢者では「自分が介護を必要となった場合」も「配偶者や家族が介護を必要となった場合」も、約50%が自宅で家族等が中心となり可能な限り他の者に関係してほしくないと考えているのに対し、若年者ではそのように考えているものは約30%であった。さらに、家族等に介護が必要になった際、高齢者では約25%が、若年者では約35%が自宅でホームヘルプサービス等を利用したいと回答しており、年齢層によって介護への他者の介入について意識の相違が認めれられた。このようにサービス必要量を算出するだけではなく、地域住民の意識の把握も重要であることが示唆された。
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