研究概要 |
本研究の目的は、平成9年9月に被用者健康保険に導入された定率2割の負担の影響を定量することである。医療において自己負担を導入する理由は、不必要な受診を抑制するという需要側への作用や、供給側にも過剰診療の抑制が働くという作用を通して、医療資源を効率良く分配することにある。しかし、医療費自己負担には、患者の早期受診を抑制して疾病の重症化をもたらす危険性がある。平成9年9月の2割の医療費自己負担導入によってすでにマクロ経済学的に受診率の低下が認められたことは明らかになっており、必要な受診をも低下させたかどうかを医療経済学的に検証することは重要な今日的な課題である。 本年度は導入前年度である平成8年度の被庸者健康保険の受診データをデータベース化した。調査対象は組合管掌健康保健組合の連合組織である「健康保険組合連合会」に加入する全組合1,814組合(被保険者総数-1,553万6,251名)とし、健康保険組合が毎年公表している収支決算報告書を解析し、組合員の受診行動を定量した。受診行動の指標としては、一人当たり入院医療費、入院受診料、一件当たり入院日数、一人当たり外来医療費、外来受診率、一件当たり外来日数、一人当たり歯科医療費、歯科受診率、一件当たり歯科日数とした。一人当たり入院医療費は28,110円、入院受診率は0.0894、一件当たり入院日数は12.73、一人当たり外来医療費は53,400円、外来受診率は4.9055、一件当たり外来日数は1.90、一人当たり歯科医療費は20,015円、歯科受診率は1.3915、一件当たり歯科日数は2.58であった。次年度は導入後の平成10年度の健康保険組合連合会のデータを解析し、受診行動の指標ごとに定率負担導入の影響を明らかにする予定である。
|