1997年9月に行われた被用者健康保険における被保険者に対する定率2割負担の導入の影響を評価した。対象は1996年度および1998年度に健康保険組合連合会に所属する全組合1797組合とした。受診の指標としては、入院、外来、歯科の受診率、1件当たり診療日数、1日当たり医療費、1人当たり医療費とした。被保険者の平均年齢、平均標準報酬月額、被保険者総数、性比、扶養率を考慮して、定率負担導入の影響を評価した結果、受診率の変化の推定値(95%CIl)は、受診率の変化の推定値(95%CI)は、入院が-6.96%(-8.23%〜-5.66%)、外来が-4.79%(-5.56%〜-4.01%)、歯科が-5.77%(-6.37%〜-5.17%)であった。1件当たり日数の変化の推定値(95%CI)は、入院が-4.66%(-5.40%〜-3.92%)、外来が-5.67%(-6.07%〜-5.28%)、歯科が-1.82%(-2.22%〜-1.42%)であった。1日当たり医療費の変化の推定値(95%CI)は、入院が-3.15%(-4.01%〜-2.28%)、外来が-13.00%(-13.86%〜-12.14%)、歯科が-11.48%(-11.85%〜-11.11%)であった。被保険者1人当たり医療費の変化の推定値(95%CI)は、入院が-14.08%(-15.51%〜-12.64%)、外来が-21.54%(-22.26%〜-20.82%)、歯科が-18.11%(-18.70%〜-17.51%)であった。組合特性との関連では、定率1割負担導入の時には、外来受診率と歯科受診率に関しては平均報酬月額と関係はなかったが、今回の定率2割負担導入の分析では関連が認められた。また、入院、外来、歯科ともに1件あたり診療日数と平均報酬月額とは負の関係があった。このことは、平均報酬月額の低い人程、受診率が低いが、受診すると受診日数を多く要すということである。これは所得効果(income effect)により、所得の低い人は早期に受診することが妨げられている結果である可能性があり、定率負担導入は早期受診の保障という観点からも再検討される必要があろう。
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