本研究では、細胞周期撹乱に関する研究とヒ素化合物曝露評価のためのラットを用いた代謝研究を行った 1.細胞周期撹乱に関する研究では以下の結果を得た。 (1)ジメチルアルシン酸の分裂中期捕捉活性はチュブリンの正常な集合を阻害することおよびその結果として正常な紡錘体形成が妨げられることをin vitroでのチュブリン集合実験および抗-α-チュブリン抗体を用いた蛍光抗体法によって明らかにした。 (2)ジメチルアルシン酸がチュブリンのGTPase活性を阻害することをキャピラリー電気泳動を用いて明らかにした。この結果はジメチルアルシン酸によるチュプリンの正常な集合阻害がGTPase活性阻害が一因であることを示している。 (3)ジメチルアルシン酸の細胞毒性、分裂中期捕捉活性および染色体異常誘起性が生理学的に異常ではない濃度のシステイン存在下で約10倍強くなることを発見した。 2.ラットを用いたヒ素の代謝研究に関しては以下の結果を得た。 (1)尿中並びに糞中に排泄される未知ヒ素代謝物(M-1、M-2)に注目し、それらが生成される機構について調べた。その結果、M-1、M-2は肝臓のメチル化と異なる経路で生成されることを明らかにした。 (2)DMA長期投与後の尿と糞のヒ素代謝物を比較した結果、糞中より未知ヒ素代謝物が多く検出された。新しい未知ヒ素代謝物、M-3も糞中より検出された。このことより未知ヒ素代謝物の生成には腸内細菌が関与していることが示唆された。 (3)in vitroでラット盲腸内容物にはDMA変換能があることがわかった。DMA変換能のある大腸菌を分離し、その変換能を調べた結果、DMAをM-2とM-3に代謝し、TMAOをM-1に代謝することがわかった。またこの反応はシステイン要求性であることもわかった。
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