研究概要 |
本年度は、被検動物としてモルモットを用い、対象有害要因としてメタノールと騒音を、先行研究を踏まえてそれぞれ単独では影響の出ない曝露量を複合曝露し、聴性脳幹反応(ABR)を指標として聴覚閾直にどのような影響を及ぼすかを検討した。 騒音単独曝露群としてwhite noiseを1日3時間、6日間連続曝露した。先行研究において聴覚に影響を及ぼす最低限の曝露騒音レベルは100dBから105dBの間に存在していた。そこで今回、曝露騒音レベルは100dBとした。複合曝露群として、上記騒音曝露に続いて1日8時間、7日間曝露チャンバー内においてメタノールを曝露した。同様に先行のメタノール単独曝露実験では、聴覚に影響を及ぼす最低限の曝露濃度は1,900ppmから2,400ppmの間に存在していたため、メタノールの曝露量は1,500ppmとした。またメタノール単独曝露群として上記のメタノール曝露のみを行った。さらにすべての曝露を除いた対照群を加えた各群3匹、計12匹を被検動物とした。対照群、騒音単独群、メタノール単独群、複合曝露群で実験前後の閾値変動をみると、ABRの2,4kHz刺激音において、群間に有意な差を認め、複合暴露群で閾値上昇が最も大きかった。前回の騒音単独曝露実験では、105dBの騒音レベルですべての周波数に、100dBの騒音レベルでは16kHz刺激音に閾値上昇を認め、高周波数域に影響が大きかった。またメタノール単独曝露実験では、ABRの2kHz刺激音において曝露濃度1,900ppmでは有意ではないが閾値上昇の傾向があり、2,400ppmでは有意な閾値上昇を認め、低周波数域に影響が認められた。以上のことから、メタノールと騒音を複合曝露した場合、それぞれ単独では影響の出ない曝露量でも聴覚に影響を及ぼし、低周波数域への影響が大きいことがわかった。 今後同様の実験を行い、さらに検証を行うとともに、実際の産業現場においても騒音と有機溶剤の影響について調査していく予定である。
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