【研究目的】従来のコホート研究は、死亡や罹患、すなわち健康をエンドポイントにしたものがほとんどである。しかし、昨今は、健康至上主義の問題点も指摘されるように、健康を資源として、その先の実存やQOL(生命の質)こそを目指した保健福祉活動が必要であると考えられるようになった。人間は社会的な生き物であると言われるように、QOLを構成する要素のひとつとして社会活動は非常に重要であると考えられる。そこで、脳血管疾患の有病者、その他、様々な状況の人について、どのような要因が、その後の社会活動の活発さを規定するのかを明らかにすることを目的とした。 【研究方法】脳血管疾患罹患率の高いA地区の住民を対象として、ベースライン調査を実施した。調査は、訪問面接調査、家庭血圧測定を実施した。調査項目には、ADL、手段的ADL、SF-36によるQOL、睡眠状況なども含まれる。また、一部の対象者に関しては、血液検査、24時間血圧、心臓超音波検査などを含む、より詳細な検査を行った。また、その後、自記式調査も実施した。この中には、SES-Dによる抑うつ度、ソーシャルサポート、ストレス、自覚的健康観、幸福感なども含まれる。 【結果】ADLに関しては、歩行・移乗に介助を要する人は4.5%であった。耳が遠くて会話に支障がある人は11.3%であった。SF-36に関しては、自覚的健康状態が良い以上の人は79.9%であった。過去1か月間に、身体的な理由で仕事やふだんの活動ができないものがあった人は21.5%、心理的な理由で仕事やふだんの活動が思ったほどできなかった人は13.6%であった。その他、普段の生活の中で、自分の楽しみや生きがいを持っている人は63.2%であった。睡眠に関しては、就寝時なかなか寝付けないことがある人は55.1%、早朝に目が覚めてしまうことがある人は38.0%であった。
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