【研究目的】従来のコホート研究は、死亡や生活習慣病への罹患をエンドポイントにしたものがほとんどである。しかし、昨今は、健康至上主義の問題点も指摘されるように、健康を資源として、その先の実存やQOL(生命の質)こそを目指した保健福祉活動が必要であると考えられるようになった。人間は社会的な生き物であると言われるように、QOLを構成する要素のひとつとして社会活動は非常に重要であると考えられる。また、近年、損失生存年数(PYLL)などの分析から、自殺の重要性が認識され、うつ状態が重視されている。また、脳血管疾患、高血圧との関連で頭痛も重視されている。そこで、脳血管疾患の有病者、その他、様々な状況の人について、これらの要因の状況等を、コホート研究の中で明らかにすることを目的とした。 【研究方法】脳血管疾患罹患率の高いA地区の住民を対象として、まず、ベースライン調査を実施した。調査は、訪問面接調査、家庭血圧測定を実施した。調査項目には、ADL、手段的ADL、SF-36によるQOL、睡眠状況なども含まれる。また、一部の対象者に関しては、血液検査、24時間血圧、心臓超音波検査などを含むより詳細な検査を行った。最終年度に、再度、訪問面接調査、家庭血圧測定を実施し、エンドポイントデータとした。この中には、知識・態度・行動(KAP)、SES-Dによる抑うつ度、ストレスなども含まれる。 【結果】ADLに関しては、歩行・移乗に介助を要する人は1.6%であった。追跡期間中に胸痛のあった人は6.8%であり、2.5%は胸痛の持続時間が数分間であった。気を失ったことがある人は2.5%、片方の手足が動かなくなったことがある人は14.0%であった。また、頭痛もちは、11.9%であった。ストレスについては、ほとんどない54.1%、少しある20.6%、とてもある7.8%であった。ストレスの内容としては、家庭内のことや仕事のこととする人が多かった。その他、種々のベースラインデータとエンドポイントデータの関連を検討した。
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