研究概要 |
今や脳・心血管疾患等の生活習慣病(成人病)の基礎疾患となっているアテローム性動脈硬化の予防は最重要課題の一つとなっている。私は、食によるアテローム性動脈硬化の予防を志向し、二大リスクファクターとされる高血圧と高脂血症の食による予防・改善作用について研究を進めてきた。特に、高脂血症に関連してはリポ蛋白代謝を中心とした脂質代謝改善作用の研究を進め、今回は食品ならびに食品中の有効成分の作用機構を遺伝子レベルまで掘り下げて明らかとすることを目的とした。そして、平成11年度においてRT-PCR法とDensitograph AE-6915-Lane analyzer system[Atto(株)、平成11年度購入]による各種アポ蛋白や脂質代謝関連酵素蛋白のmRNA発現量測定法の確立を行った。平成12年度は、さらに肝臓脂肪酸代謝関連酵素蛋白mRNA発現量の定量化の確立を進めAcyl-CoA oxidase(ACO)Fatty acid synthase(FAS),Acyl-CoA synthetase(ACS),Uncoupling protein-2(UCP-2)mRNA発現量の定量化を確立した。次に、モデル動物として高血圧自然発症ラット(SHR)系統を用い、これまでに確立した各種蛋白mRNA発現量の定量法を適用し、ハープシール油、カボス果汁粕、キノア粉末等が血圧や脂質代謝に及ぼす有効作用について分子・遺伝子レベルにまで検討を進めた。その結果、カボス果汁粕やn-3系多価不飽和脂肪酸含量の高いハープシール油では、血清リポ蛋白分画すべての減少、血清apoA-Iとその肝臓mRNA発現量減少が明らかとなり、Peroxisome proliferator-activated receptor(PPAR)関与の遺伝子転写調節機構が示唆された。そこで、同時にPPARαのリガンドとして知られているBezafibrateを用い、Bezafibrateが血清や肝臓脂質代謝に及ぼす影響について分子・遺伝子レベルにおいて比較検討した。
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